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助成金について

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会社を経営するのも一苦労な企業が多いほど不景気なこのご時世。
企業の手助けとして助成金がもらえると聞いたことはあるけど、実際どんな助成金があるの?
どういった条件で助成金がもらえるの?といった疑問を持たれている方も多いと思います。
そんな「助成金」の疑問について藤武先生にインタビューしました。


藤武先生 プロフィール  

社労士 藤武 雅之 氏

昭和45年生まれ 年齢 39歳
大阪国際大学 卒業
綜合警備保障株式会社、株式会社イングに勤務
平成16年 藤武社会保険労務士事務所 開業
平成19年 株式会社アシスト 設立
平成22年 社会保険労務士法人アシスト 設立
株式会社ユーキャンを含め2社の社会保険労務士資格受験の指導にも携わる。

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藤武先生、本日はよろしくお願い致します。

藤武先生:


こちらこそよろしくお願い致します。

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では早速お聞きしていきたいのですが、まず助成金とはどういったものなのでしょうか?

藤武先生:


助成金とは一般的に条件に合えば受け取ることができ、そのお金に関しては返金する必要がないものです。
助成金という言葉自体は広く一般に使用される言葉です。例えば車を買う時の補助などもそのひとつですが、 我々社労士が取り扱う助成金というのは、厚生労働省が取り扱う助成金のことです。 社労士の仕事は、労働保険や社会保険といった法律を取り扱いますので、その中の一つである雇用保険からの財源における助成金を取り扱っているのです。
ここではその厚生労働省による助成金に絞ってお話をしたいと思います。


藤武先生

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その助成金でメインとなるものは何でしょうか?

藤武先生:


人を雇い入れることに関する助成金が一番のメインとなります。 雇用の継続や雇用設備を整える事業主に対して補助を行うことが主な助成金の使い道となります。

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雇用がメインということなんですね。しかし人材を雇用するタイミングは様々ですよね。 例えば会社設立・開業時の助成金にはどのような助成金がありますか?

藤武先生:


会社設立・開業時の助成金には、たとえば受給資格者創業支援助成金中小企業基盤人材確保助成金という2つの大きな助成金があります。

受給資格者創業支援助成金

対象となる方

(1) 次のいずれにも該当する受給資格者 (その受給資格に係る雇用保険の基本手当の算定基礎期間が5年以上ある者に限ります。) であったもの(以下「創業受給資格者」といいます。)が設立した法人等※の事業主であること。
 ①法人等を設立する前に、都道府県労働局の長に「法人等設立事前届」を提出した者
 ②法人等を設立した日の前日において、当該受給資格に係る支給残日数が1日以上である者
(2) 創業受給資格者が専ら当該法人等の業務に従事するものであること。
(3) 法人にあっては、創業受給資格者が出資し、かつ、代表者であること。
(4) 法人等の設立日以後3か月以上事業を行っているものであること。
※ 法人等の設立とは、法人の場合は法人の設立の登記等を行うことをいい、個人の場合は事業を開始することをいいます。

平成22年3月31日までに
法人等設立事前届を提出した事業主の方

平成22年4月1日以降に
法人等設立事前届を提出した事業主の方

創業にかかる
経費
(通常地域)
創業後3ヶ月以内に支払った経費の3分の1
 支給上限:200万円まで
(開発地域)
創業後3ヶ月以内に支払った経費の2分の1
 支給上限:300万円まで
創業後3ヶ月以内に支払った経費の3分の1
 支給上限:150万円まで
開発地域進出
移転経費
(開発地域に移転した場合)
交通費・引越等経費
上乗せ分
(創業後1年以内に雇用保険の一般被保険者を
 2名以上雇い入れた場合)
 50万円

受給資格者創業支援助成金は、働いており雇用保険に加入していたが、失業し失業保険をもらいながら求職をしている最中に自らが創業し、 創業後1年以内に雇用保険の適用事業の事業主となった場合に、当該事業主に対して創業に要した費用の一部について助成する助成金です。
この助成金の概要は次のようになっています。
・助成金の支給は2回に分けて行います。
・平成22年4月1日から制度が変わります。
  ①支給上限額が200万円から150万円になります。
  ②開発地域における支給額の増額や開発地域進出移転経費が廃止されます。
  ③創業後1年以内に雇用保険の一般被保険者を2名以上雇い入れた場合に上乗せ分50万円を助成します。
   ただし上乗せ分に係る支給回数は1回です。


中小企業基盤人材確保助成金

対象となる方 改善計画(※)の認定を受けた中小企業者が、新分野進出(創業・異業種進出)又 は生産性の向上に必要な人材を雇い入れた場合に助成します。
受け取れる金額 対象労働者を雇い入れた日の直後の賃金締切日の翌日から起算して6か月ごとに、以下の金額を2回に分けて支給します。
新分野進出 1人当たり 140万円(70万円×2回。最大5人まで)
生産性向上 1人当たり 170万円(85万円×2回。最大5人まで)

中小企業基盤人材確保助成金は主に創業するにあたってその創業に必要な資格等をもった人材(基盤人材)が必要な場合にその方を雇入れるときに支給されます。 例えば飲食店をするのに調理人が絶対に必要ですよね。そういった絶対必要となる人材を雇用する際に受け取れる助成金ということです。 これは新規事業展開を行う際にも活用できます。この助成金では基盤人材1名について140万円が支給され、最大5名分までが支給されます。
※ 改善計画とは、中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律に基づき、 中小企業事業主等が労働時間等の設定の改善、新分野進出に伴い必要となる労働者に対しての雇用管理の改善等について取り組む計画のことです。

これはかなり条件が厳しい助成金です。この助成金を受け取るためにはまず、少なくとも250万円以上の設備投資を行わないといけません。 飲食店など揃えるものがたくさんある場合だといいですが、たとえばコンサルタントといった職業などは、設備に経費を使う必要もないので、 条件を満たすことができず、助成金を断念するということがあります。

藤武先生

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そうなんですね、助成金を受け取るまでにはやはり厳しい条件もあるんですね。 それでは、事業を行っていく中での雇用についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

藤武先生:


はい。たくさんの助成金はありますが、一番受け取りやすいものとしてはトライアル雇用奨励金というものがあります。


トライアル雇用奨励金

対象となる方 ①45歳以上の中高年齢者(原則として雇用保険受給資格者又は 被保険者資格の喪失日の前日から起算して1年前の日から当該喪失日 までの間に被保険者であった期間が6か月以上あった者)
②40歳未満の若年者等
③母子家庭の母等
④季節労働者(厚生労働大臣が指定する地域・業種に従事する者であって、各年度の10月1日以降に特例受給資格者として離職した65歳未満の者)
⑤中国残留邦人等永住帰国者
⑥障害者
⑦日雇労働者・住居喪失不安定就労者・ホームレス
受け取れる金額 対象労働者1人につき、月額40,000円
支給上限:3ヶ月分まで

トライアル雇用奨励金は業務遂行に当たっての適性や能力などを見極め、その後の常用雇用への移行や雇用のきっかけとするための助成金です。 職業経験、技能、知識等により、就職が困難な求職者を試行的に短期間雇用(原則3か月)する場合に、助成金が受け取れます。

さらに、そのトライアル雇用を経た後に正規雇用になった一定の若年者である場合に若年者等正規雇用安定化特別奨励金を受け取ることができます。


若年者等正規雇用安定化特別奨励金

対象となる方 ●ハローワークからの紹介によりトライアル雇用として雇い入れ、トライアル雇用終了後引き続き同一事業所で正規雇用する場合
●トライアル雇用開始日の満年齢が25歳以上40歳未満
●トライアル雇用開始日前1年間に雇用保険の一般被保険者でなかった者
受け取れる金額 ●第1期 250,000円(中小企業事業主は500,000円)
 正規雇用開始日から6ヶ月経過してから1ヶ月以内に申請
●第2期 125,000円(中小企業事業主は250,000円)
 正規雇用開始日から1年6ヶ月経過してから1ヶ月以内に申請
●第3期 125,000円(中小企業事業主は250,000円)
 正規雇用開始日から12年6ヶ月経過してから1ヶ月以内に申請

若年者等正規雇用安定化特別奨励金は2年6ヶ月をかけて100万円が受け取ることができるのですが、最初の6ヶ月で50万円、その後1年経過時に25万円、さらに1年経過することで25万円が受け取れます。 一定の若年者とは25歳以上40歳未満で過去1年間雇用保険に入っていなかった方を指します。

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それでは、25歳未満の方を雇入れても助成金の対象には一切ならないのでしょうか?

藤武先生:


それに関しては、つい最近出来た助成金があります。3年以内既卒者トライアル雇用奨励金というものです。

3年以内既卒者トライアル雇用奨励金

対象となる方 ①平成20年3月以降の新規学卒者で就職先が未決定
(平成22年度の新規学卒者については、卒業日以降に本制度を利用できます)
②卒業後安定した職業に就いたことがない
(1年以上継続して同一の事業主に正規雇用された経験がない)
③40歳未満
④ハローワークまたは新卒応援ハローワークに求職登録を行い、就職先が未決定で、 正規雇用の実現のためには既卒者トライアル雇用を経ることが適当であると公共職業安定所長が認める者
受け取れる金額 ●有期雇用期間(原則3ヶ月)・・・対象者1人につき月額10万円(最大30万円)
●有期雇用終了後の正規雇用の雇入れ・・・対象者1人につき50万円
                       (雇入れから3ヶ月経過後に支給)

こちらもトライアル雇用の形態ですが助成金の額が少し異なります。 トライアル期間の3ヵ月間に月額10万円(合計30万円)、その後正規雇用し、その後3ヶ月経過によって50万円が支給され、 短期間の間に多額の助成金を受け取ることができます。


また、もう一つ雇用に関する助成金で、特定就職困難者雇用開発助成金というものがあります。 60歳以上の方や母子家庭のお母さんであったり、障害者の方など一般的には就職活動が難しい方を雇入れたときの助成金です。 こういった方をハローワーク経由で雇用した場合、以下の図の金額が助成金として受け取れます。


特定就職困難者雇用開発助成金

対象労働者
(一般被保険者)

支給額

助成対象期間

大企業 中小企業 大企業 中小企業
短時間労働者以外 ①高年齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等 50万円 90万円 1年 1年
②重度障害者等を除く身体・知的障害者 50万円 135万円 1年 1年6ヶ月
③重度障害者等※1 100万円 240万円 1年6ヶ月 2年
短時間労働者※2 ④高年齢者(60歳以上65歳未満)、母子家庭の母等 30万円 60万円 1年 1年
⑤身体・知的・精神障害者 30万円 90万円 1年 1年6ヶ月

(※1)重度身体・知的障害者、精神障害者、45歳以上の身体・知的障害者
(※2)週当たりの所定労働時間が20時間以上30時間未満の者

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今お聞きしだけでも本当にたくさんの助成金が存在するんですね。申請にも条件が違っていて個人で申請を行うのは大変そうですね。 いくつか助成金をお伺いしましたが、中小企業で申請の依頼が多い助成金はありますか?

藤武先生:


私のところで多いのは先ほど申し上げた中小企業基盤人材確保助成金受給資格者創業支援助成金ですね。 初めて会社設立をするお客様とのマッチングすることが多いので、この2つの助成金が多いのかなと思います。

また、それ以外では、不景気によって会社を維持することが厳しくなり、本来なら従業員を解雇しなければいけないけれど、 解雇せずになんとか踏ん張ろうとしている会社に対しての助成金もあります。それが雇用調整助成金です。 この助成金に関しては昨年から今年の前半まで申請数が多かったですね。

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雇用調整助成金を受け取った会社はその後、会社を維持することが出来たのですか?

藤武先生

藤武先生:


そうですね。今でも助成金を受け取って維持している会社もありますし、元の状態に戻った会社もあります。 完全に倒産してしまった会社というのはほとんどないですね。

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それでは、反対に申請の数は少ないけど、実は狙い目な助成金というのはありますか?

藤武先生:


狙い目な助成金はたくさんあります。実際に助成金そのものを知らない方もいらっしゃって、 受け取れる助成金があるのに、受け取れていない企業が多いのも事実ですね。 極端な話で、明日までに申請しておけばよかったケースや、行動を起こす前に相談していただければよかったケースは多くあります。 我々社労士としてもその会社の雇用状況や、会社全体の状況を伺ってからでないとどういった助成金が受け取れるか判断することができません。 ですから行動に移す前に、一度相談していただきたいですね。

特に先ほどもお話しました3年以内既卒者トライアル雇用奨励金はねらい目ですね。最近出来たばかりで国としても力を入れています。 要件もそれほど厳しくなく、短期間で受け取ることができますので活用しやすい助成金だと思います。

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やはり助成金も常に新しいものが出たり、実は狙い目のものがあったりするんですね。 こういった難しい助成金を申請する際、社労士さんに依頼するメリットは具体的にどういった部分がありますか?

藤武先生:


やはり、事業主様にとってのメリットは申請にかかる時間の節約と煩雑さからの解放ですね。 事業主様にとって一番大切なことはご自身の経営です。経営に必要な時間に、助成金の手続きで何度も申請に行かなければならなかったりします。 これは事業主にとってかなりの負担です。ですから、社労士に依頼すると時間と労力といった部分で大幅に軽減できるといえます。 また、自分一人では本当に助成金がもらえるのかといった疑問を持ちながら申請を行ってしまい、結局断念してしまうことになるケースも多々あります。 そういった部分でも社労士に相談することで受け取れるかどうかの判断がしっかりつくというメリットもあります。

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社労士さんに依頼するとかなりメリットとなることがわかりました。 では依頼した場合の費用というのはどれくらいになりますか?

藤武先生

藤武先生:


着手金としていただく社労士もいますし、成功報酬としていただく方もいます。 大体の方が成功報酬の10~15%という方が多く、多くても20%くらいだと思います。

助成金に関してよい社労士かどうかを判断するコツをお教えします。 助成金の相談をされたときに、社労士が「難しい」ということがあります。 よい社労士はなぜ難しいのかという理由を詳しく話してくれますが、そうでない社労士は抽象的な理由しか話してもらえません。 助成金自体を扱っていない社労士もいらっしゃいますので、社労士から抽象的な理由で断られた場合は、そこで断念するのではなく、他の社労士に相談するべきです。 もらうことができる助成金をみすみす逃してしまう恐れがありますので注意してください。

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同じ社労士さんでも、対応に違いがあるんですね。助成金を依頼するときは気をつけないといけないですね。
本日は助成金について非常に勉強になりました。
藤武先生、本日はありがとうございました。

藤武先生:


こちらこそありがとうございました。

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